2018.06.26
スペシャル

建築家とプロデューサーが語る、スリランカと建築。

横内 信弘

ライター

カジャデザインのプロデューサー・私市浩一と女性建築家・八巻有里が見たスリランカの魅力とは……。二人がタッグを組んだリゾートスタイルの家づくりのプロジェクトが進行している中、「スリランカの旅」は様々な触発、気づきと発見をもたらしてくれたそうです。

建築家/
チェントペルチェント一級建築士事務所
八巻有里/YAMAKI YURI
内部と外部、内部と内部、空間どうしのつながり方をテーマに、空の色や風、木々の変化が感じられる居心地のいい住まいづくりを提案。

プロデューサー/
KAJA DESIGN
私市浩一/KISAICHI HIROKAZU
空間をトータルプロデュース。「クライアントの想像を超える」がモットー。

インドの涙、スリランカという国とは

―外部の建築家である八巻さんが、今回、カジャデザインの「スリランカの旅」に同行することになった経緯を教えてください。

八巻:カジャデザインさんは世界のリゾートを体感するために、毎年研修で海外へ行かれているのを羨ましく拝見していました。昨年まではインドネシアが多く、今年はスリランカだということで、すごく興味がありました。

私市:実は、今回スリランカに行くことに決まった時、行きたいっていう建築家の先生方が沢山いたんですよ。かなり競争率は激しい感じでしたね(笑)。私と八巻さんは現在、一緒に物件を担当し家づくりに取り組んでいるということもあり、ご参加いただいたわけです。

リゾート建築のルーツ、ジェフリー・バワとその他の建築群にふれる旅

―スリランカについて、いいなと思われたのは、やっぱり建築家ジェフリー・バワのリゾートデザインの魅力というものが大きかったのでは。

私市:そうですね。それは非常にありましたね。

八巻:リゾート建築のルーツというキーワードに魅かれました。カジャデザインさんと一緒にリゾートスタイルの家づくりに取り組んでいる私にとって、大いに興味があるところでした。

私市:まだ、そんなに大勢の日本人が押し掛けるという場所ではないし、建築的にも新しい発見があるのではないかと期待しました。中でもバワは、スリランカの国会議事堂や寺院、ホテルなどの建築を手がけており、その自由な建築スタイルは没後15年経って一段と輝きを増しています。

八巻:写真などでは知っていましたが、実際に彼が1991年に設計したヘリタンス・カンダラマホテルを見た時は衝撃的でした。自然に還る建築というコンセプトが込められていて、たとえばツタがからまる建物だったりするのですが、やがてはジャングルの中に埋もれるように設計されているのを実感しました。自然との共生とよく言われますが、これほどまでに大胆な設計提案がされていることに、私は大いに刺激を受けました。

私市:ヘリタンス・カンダラマホテルは世界的に知られるアマンリゾートのお手本となったともいわれていますからね。

八巻:地理的には辺ぴな場所にあるのですが、このホテルを見るためだけにスリランカを訪れる意味があると思います。

私市:スリランカはバワの建築だけではありません。ケリー・ヒルが設計したアマンウェラや、最南端の海岸沿いに続く岩礁の上にひっそりとたたずむアナンタラ・ピース・ヘヴン・タンガラ・リゾートはなども見逃せないリゾート建築が多数存在します。これから、日本での家づくりに絶対プラスになると確信しました。

ジャングルに埋もれるように佇むヘリタンス・カンダラマホテル

家づくりにおける建築家とプロデューサーの役割と目線の違い

―スリランカとは少し離れますが、八巻さんと私市さんは現在、一緒に取り組んでいる家づくりがあるそうですね。建築家とプロデューサーの役割とか目線の違いはありますか。

私市:そうですね、現在3件の住宅を一緒に取り組んでいます。それぞれ、お客様との家づくりでも、やっている分野で切り口が違ってきます。建築家は1軒の家に対して図面描いて、深く細部まで入るんですよね。営業(プロデューサー)の場合は、図面を描くわけではありませんが、いろんな建築家の人と一緒に仕事ができ、経験値が多くなるという利点があります。そこから建築家とプロデューサーの目線というか、切り口の違いが生まれるわけで、そこに相乗効果が期待できるのではないでしょうか。

八巻:建築というのはお客様と営業の人との相性、設計者との相性、技術者との相性などがあって、極めてパーソナルっていうか、大変個人的な趣味趣向性が高いものだと思いますね。

私市:最近のお客様は建築についてよくご存知ですし、知識もお持ちですが、当然図面は作ってもらわないといけない。そこで、自分の意思が伝わるか伝わらないかはすごく重要です。伝わらないとすごくストレスを感じるし、手間暇も時間もかかります。八巻さんは、見た目も性格的にもふんわりした印象があるので、ある意味、頼りないって見えるかもしれません(笑)。だけれども、他の建築家にはない空間の大胆さとか、オッ!という驚きのある空間を作ったり、すごいギリギリを攻めたりして、こちらの想像を超える作品が出てくるのが面白いところです。

八巻:東京などは土地の制約がありますし、土地を最大限に活用してあげないとやっぱりもったいないな、って。困難を克服するためには、アイデアがなければ勝負になりません。

「このお家の中で私はここが好き」

―そんなお二人が今回スリランカに行かれて、これからの設計とか、企画に活かせそうな手ごたえはありましたか。

八巻:スリランカと日本の環境は全く違いますし、そのままもってくるというのはナンセンスだと思います。ですが、自然や風景を活かした建築という意味では、日本の住宅設計でも可能性があると感じましたね。たとえば、小さな窓辺があって、そこから庭が見えるとか……。ああ、空が見えるっていいなとか、水が見えるっていいなとか、緑が見えるっていいなっていう感覚を想起させる表現がしたい。全部を満たすことは日本の住居では無理ですけど、ちょっとした空間をつくることでそういった空間ができそうなヒントとなりました。それから、スリランカのリゾートホテルなどで実感したのは、ずっと居たくなるような心地いい空間があちこちにあったこと。「このお家の中で私はここが好き」って、お子さんや奥さま、ご主人に言ってもらえるスペースを作りたいと強く思いました。

私市:私も同感です。本質的にいいなと思うものが普通にあるというのは感動ものでした。とはいえ、この感覚をどう日本の住まいで実現するか、というのは大変なんですよ。でも、実際にホテルの気持ちのいい空間に身をゆだねていると、「あの空間の繋がり具合とか、ディテールや素材、色使いがこうなっているから、それで気持ちいいと感じたんだな」と分かるのです。
私は後輩によくこう話します、「経験したことを引き出しにしなさい」と。このケースだったらあの引き出しが使えるな、となると、提案できる建物の幅も広がるっていうことなんです。

八巻:やっぱり知識として持っているものより、体験したもののほうが、感覚的に出てくるってありますね。たとえ忘れたとしても、お客様のお話を聞いている間に、パッと出てきたりとか。なんかキーワードを聞いた途端に、急に思い出したりとかっていうのが、やっぱり体験に基づく裏付けの強みだと思います。

私市:バワの建築で私が一番共感したのは、建物ではなくランドスケープをデザインしていることでした。客室をデザインする云々というより、土地を全部デザインしていくというか……。

八巻:私の設計手法は空間の繋がりを考え、空の色や風、木々の変化が感じられる心地いい住まいづくりが目指すものなので、スリランカのリゾート建築はとても肌に合う感じでした。

私市:他にも気づきがありました。最初に出てきたヘリタンス・カンダラマホテルですが、北向きに建っているんです。北に湖があって、南側は山の斜面です。普通は建てないだろうって立地ですが、南国の強い日差しから護ることも配慮されているのでしょう。いろいろヒントがあった旅でした。

―帰国後、具体的にプランづくりに影響した設計やアイデアなどはありますか。

八巻:帰国後、改めてヒアリングをしたお客様がいらっしゃったじゃないですか。こだわりがあるお客様で、読書コーナーのような場所を作りたいとおっしゃって……。

私市:そうそう。プランを変更したいというご要望でしたね。
二人のお嬢様がいらっしゃって、「家の中で学びのヒントがいろいろあるような、気付いたらヒントを得てるみたいな家にしたい」と奥様から改めてご要望が出たのです。

八巻:「本もたくさん置きたい」って言われていてね。

私市:玄関上がってすぐの階段下が、そういうライブラリーになっていたら面白くないか、という話になった。

八巻:普通、発想するのはリビングに階段を設けるリビング階段ですが、そうはならなかった。

私市:お客様が思い描いたプランでは、キッチンとリビングが分かれていて、その真ん中に階段がありました。奥様は、「料理は集中してやりたいから、独立キッチンでいい」と。そう考えると階段の場所には、吹き抜けもあるし、リビングとキッチンをつなぐ間の空間でもある。
だから、ただの階段じゃなくてライブラリーを兼ねる階段にしたら楽しいだろうという発想です。自然な動線の中にあり、気軽に本が気持ち良く読めるスペースになるんじゃないかなって。バワのヘリタンスの光景が浮かんできて、階段の踊り場にあるバワデスクみたいな感じ、って……。あれ、無意識に出てる。やはり、今回のスリランカの旅の影響を、しっかり受けていますね(笑)。

ジェフェリーバワが愛した場所とされる、窓辺のデスク
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