2017.2.24 スタッフ
スタッフブログ

バウハウスのデザイン哲学を継承しているTECTAをクラシカルホテルで感じ、デザインについて考えること

総合企画室 デザイナー

こんにちは。デザイナーsuzukiです。

先日、一夜限りの「TECTA BAR TOKYO」へ行ってきました。その名の通り、一晩限定のTECTA BARが東京に出現したのです。

その場所がクラシックホテル「山の上ホテル」。
アール・デコ調の内装に、TECTAの家具がしっくりと馴染み、時代を超えつつ、今も尚普遍的な魅力を醸し出していました。今回はそのTECTA社と山の上ホテルについて考えてみたいと思います。

TECTA社 ~ バウハウスのデザイン哲学を継承

「100年も昔の造形哲学が、今日もなお、私たちに影響を与え続けているなんて不思議ですね」
~バウハウス創立者ヴァルター・グロピウスの息女、アティ・グロピウスが、2003年TECTA社屋落成式で述べた挨拶より~
この言葉が印象的なように、建築やインテリアに関わる人だけでなく、バウハウスという伝統が人々を魅了し続けています。

TECTA創業者であるアクセル・ブロホイザーが、バウハウスに魅了された理由は、「美しさを維持しながら、永遠性と普遍性を保ち続けることへの関心から始まる。観念的で、美学的でもあるそれらのデザインは、時代を超えた美しいものとして人々に愛されている。」と。

ファミリー企業のTECTA社は現在、アクセル・ブロホイザーと甥のクリスチャン・ドレッシャーの経営となっており、クリスチャン・ドレッシャーは「私たちの最大の目標は、バウハウスが建築とデザイン分野で遺した財産を継承することである。
ライセンスを得たオリジナルデザインの製造だけでなく、バウハウスの創設者であるヴァルター・グロピウスが提唱した”手工業・工業・芸術の一体性と、活動の継続”という理念を後世に伝え続けていくことが重要な使命」だと。実際にクリスチャン・ドレッシャー氏とお会いしてお話ししたのですが、とても真っ直ぐな目と実直なお話しから時代を受け継ぐ強さとプライドを感じました。

ミース・ファン・デル・ローエ「BarcelonaChair(バルセロナチェア)」のデザインスケッチ画。あの脚部へと流れるようなデザインはこうした探求から生まれてくるのですね。

確かによいデザインは、人を惹き付けます。
けれど、「惹き続けさせること」はそのデザインだけの意志でなされることではなく、外部的な強い思いが必要でその外部の思いを高めるのは「そのもののデザイン力で…」と双方の強い相乗効果が相まって、更にそれが新たな人々に伝承され、そして広がり伝わり…の繰り返しがなされてはじめて歴史と共に残っていけるのではないでしょうか。

私は物質から「熱を感じる」ことがあります。もちろん物体そのものの熱伝導ではなくて、その出来上がった物体が感じさせる見えない熱量。関わる人々の熱意の分量がじわじわと語りだしてくるような感じです。

今回は作品としては知っていた多くのそれらに、実際に眺め、触れ、座り、あらためてデザインだけではない「しなやかな美しさ」を体感しました。そして、特に感じることができたのが、この「しなり」なのです。人体系家具の場合は、この「しなり」の幅が心地よさにもつながり、そこをどれだけ出せるかは、デザイン力・構造・素材・技術力があってこそと言えます。その「しなり」がその人にマッチしているほどに心地よさを生み出すのではないか?という自論でもあります。

D4 CHAIR など、正にその一例ですね。学生の頃から関わってきている「デザイン」についてを、自分なりにまた振り返る貴重な一夜となりました。

ご参考>>
2月18日(日)から3月20日(月・祝)、アクタスにて「THIS IS TECTA ─バウハウスの名作家具展─」を開催です。

山の上ホテル ~ クラシックホテルの穏やかな寛ぎ

ホテルのシンボルとも言えるアールデコ様式の建物は、建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏の設計による。

この建物は日本初の美術館である東京都美術館を寄付したことで有名な九州の石炭商佐藤慶太郎氏が設立。
「佐藤新興生活館」として完成した。当初は財団法人日本生活協会の管理下に置かれ、西洋の生活様式、マナー等を女性に啓蒙する施設として利用されておりましたが、太平洋戦争中には帝国海軍に徴用、日本の敗戦後には連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に接収されて陸軍婦人部隊の宿舎として用いられました。

ホテルとしての開業は1954年(昭和29年)1月20日。GHQの接収解除を機に、山の上ホテル創業者 吉田俊男が同財団から建物を譲り受け、ホテルとしての営業を開始いたしました。創業時、戦後復興間もない東京には、わずか4~5つのホテルがあるだけで、ホテルと言いましても普通一般の人々にはなじみの薄い、縁遠い存在である時代です。

引用:山の上ホテル 公式サイトより

場所は、にぎやかな御茶ノ水駅から、少しした細い道のゆるやかな坂の上。凛とした佇まいの静かな歴史を感じるホテルです。今回の展示会ではTECTAだけでなく、このホテルも楽しみでありました。先日のAMAN TOKYOのような都市型リゾートもモダンで素敵ですが、クラシックホテルの穏やかな居心地は味わいが深いです。

内装はアールデコ調の幾何学モチーフや直線、波線形が多用されつつ、シンメトリーな安定感、華やかなシャンデリア、布クロスなど、クラシカルで落ち着いた雰囲気。経年変化も歴史を重ねた証として全体的なくすみ感としてマイルドでまろやかな空間に仕上がっています。文豪たちは自宅ではない非日常ながらもこの穏やかな空間だからこそ、自分の世界をのびやかに書き綴ることができたのでしょうか。

個人的には、この螺旋階段の素材感やバランスがとても美しいと惹かれました。階層を優雅につないでいるイメージは、過去から現在へとしっかり伝承されているような強さを感じます。そんな空間創りをこれからも、目指していきます。