2018.5.14 世界を旅する建築会社
インドネシア

インドネシア研修座談会 Part 1 〜本当のリゾートを体感し、“感動”や“衝撃”をお客様にも感じてほしい〜

ライター 横内 信弘

カジャデザインの建築事業のルーツといえるのがインドネシアです。代表の大熊がインドネシアの旅で本物のリゾートと出会い、その空気感、エッセンスを日本の住宅建築に表現したいと強く思った場所だからです。今回のインドネシア研修旅行はカジャデザインスタッフ(営業部・工事部・積算部)とカメラマン、建築家、コピーライターという多彩な面々でした。それぞれの視点で見た、感じ取った、インドネシアのナチュラルなリゾートの魅力とその神髄を語っていただきました。まずPart1では、バリ島およびジャワ島のリゾートホテルで何を感じたのか……興味深い内容となっています。

インドネシアの魅力満載の王道ルート、バリ島からジャワ島を巡る旅

大熊 : 今回のカジャデザインの研修旅行は、当社のルーツともいえるインドネシアが舞台でした。「リゾートとは何か?」「心休まる空間とは何か?」を体感してもらうことが目的の研修旅行ですが、なぜインドネシアにしたかというと、“感動”や“衝撃”というキーワードを身をもって感じて欲しかったからです。何となく、「リゾートってこんなものか」と理解した気になって、「なんちゃってリゾート住宅」を建ててほしくない。もう一度、私が感じた“感動”や“衝撃”を皆さんにも感じてほしい、というのが発端でした。

帰国後、旅の振り返りをする代表の大熊

坂田 : 今回の旅は、営業職だけでなく、私のような工事担当や木村さんのような積算を仕事とする人、建築家の山田先生、コピーライターの日野原さん、カメラマンの金さんという多彩さでしたね。普通の会社ならそこまでしなくても、それらしいリゾートスタイルの家は建てられるし、「経費の無駄遣いだ」とトップから叱られるでしょう。でも、うちの会社は違う。トップが率先して海外研修を奨励している(笑)。

川名 :そうですね、私も今回のメンバーをみて、大熊社長が意図されていることを改めて実感しました。本当のリゾート建築を総合力で創り出すという……。

大熊 : そんなに褒めてもらわなくても……褒めてるワケじゃないか(笑)。ともあれ、私には絶対的な信念があるんだ。人生を変える建築というものがある、と。それは本で読んだり、写真で見ただけでは分からない。実際に見て、触れて、感じるしかない、と。

川名 : カジャデザインのリゾート建築は大きく分けて、インドネシアとイタリア、アメリカが大きな柱になっています。中でも大熊社長が初めてリゾートを建築のコンセプトに据えようと決意したのがインドネシアだったそうですね。

大熊 : 私にとってインドネシアは特別な場所です。それこそ初恋の人に会いに行くような感じで、様々なエリアのリゾートホテルなど、数えきれないぐらい訪れています。ひと口にインドネシアと言っても、カントリーサイドのトラディショナルなリゾートホテルから現代的なデザインのホテルまで多岐にわたっていますが、今回、インドネシアは初めてという人が多かったこともあり、カジャデザインのルーツともいえる空気感を体感してもらうため、バリ島からジャワ島を巡る王道ともいえるルートに決めたのです。

木村 : 大熊社長からは、「バリやジャワのホテルを見れば、リゾートとは何かがわかる」と常々聞かされていましたが、写真からも十分、その感じは伝わってきていたので、インドネシアの旅はその追体験ぐらいに考えていました。しかし、実際にその土地に行き、ホテルに泊まり、空気を感じると、それは想像をはるかに超える感動がありました。

大熊 : 魂が震えるというか、こんな空間を創作したいと思わせてくれた建築が二つあったんだ。皆さんがこの旅で初めに宿泊したバリ島のホテル「ザ・バレ」と、後半で泊まったジャワ島のホテル「アマンジヲ」。これらのホテルにどうしても皆さんを連れて行きたいと思ったのは、何度宿泊しても飽きのこない、心休まる空間がそこにあるからです。住空間に置き換えて想像してみると、理想的な場ということができるでしょう。ロケーションとインテリア、そしてマテリアルの使い方など、日本での家づくりにも大いに触発されるものがあると思っています。

the baleヴィラ、一軒家のような作り
the baleプールサイドのデイベッド

参加メンバーのそれぞれの思い。それぞれのインドネシア

山田先生 : 私もホテル「ザ・バレ」にはとても深い感銘を受けました。ホテル「アマンジヲ」も良かった。ザ・バレもアマンジヲも、実際に一泊してみて、視覚だけでなく、泊まったときの夜の空気も体験できたのが大きかったですね。「大熊社長がつくりたい空気感って、これだったんだ」とスッと腑に落ちました。

大熊 : 山田先生はヨーロッパの建築がお得意で、イタリアンリゾートのようなテイストでの設計をお願いしてきました。その作品には大満足なのですが、正直なところ、アジアの建築にはほとんど興味がない(笑)。そんな先生に、アジアのリゾートの良さを体感していただきたくて、今回やっと実現してうれしかったんですよ。

山田先生 : すみません(笑)。テレビや雑誌、写真から感じ取るものには、限度がありますよね。今回の旅は新しいものを取り入れる良いチャンスだと思ったし、今までカジャデザインさんとお付き合いする中でつくってきた「リゾート空間」が本当に正解なのか、答え合わせをしてみたい気持ちもありましたね。

旅に同行した建築家の山田先生

日野原 僕はコピーライターとしてカジャデザインのリゾート建築の魅力や独創性をさまざまなツールで紹介してきました。僕自身はコピーライターの流儀として、“実際に体験すること”を重要視しています。商品のコピーを依頼されれば、その商品を必ず購入します。でもカジャデザインの場合、僕がプライベートで体験することは難しい。お話をいただいたときは、行くしかない!という気持ちでしたね。
1年近くお仕事をご一緒する中で、リゾートに対する漠然としたイメージはできていたけど、現地に行ってみるとたくさんの発見がありましたね。実際に体験しないと出てこない言葉って、あると思います。

旅に同行したライターの日野原さん

木村 : 僕はカジャデザインに入社して6年目です。仕入れのための旅には何度も同行していますが、今回のようにリゾートホテルの視察は初めてでした。

旅を振り返り、嬉しそうに話す積算の木村

大熊 : 木村くんにはホテルの空気感や素材のリアルな使われ方を知って、仕入れに役立ててほしいと思ったんだ。それと、うちの会社の素材を誰よりも把握している彼に期待したのは、「この素材はたくさん在庫があるから、買わないで!」「これは値段が高すぎるからおすすめできません」って、僕を制してくれる役割(笑)。

木村 : 前職でも仕入れ経験はありましたが、素材ひとつ買うにも稟議が必要でした。今回の旅では、大熊社長に「この素材がほしい、こう使いたい」と提案すれば「いいね、買おう!」とすぐにリアクションをいただけて、非常に実りある旅でしたね。

現地で石材の洗面ボウルを買い付けをする様子、天然の石なのでひとつひとつ形が異なる

大熊 : 工事部からは現場監督の坂田くんが参加してくれました。彼も同行は初めてだね。現地の空気感を体感して建築に反映させて欲しくて、呼びました。うちのお客さまの求めるレベルは高いからね。

坂田 : 大熊社長が言われるとおり、営業担当だけが本物を知っているだけではダメ。“作り手”である僕たちが本物を理解していないとダメなわけです。ただ写真を見るだけでは感じ取れない五感、いや、「どうしてここで安らげるのか」を含めた“六感”でリゾートを感じ取る責任がありますよね。このインドネシアの旅はそのまたとない機会でした。まあ正直、1週間も現場を空けてしまうことへの不安はなくもなかったんですけど…(笑)。頼れる部下がたくさんいるので、その点は問題ないですね。

真剣な眼差しで話すのは、現場監督の坂田

大熊 : そして、カメラマンのyansu KIMくん。私が彼の写真に惚れ込んで、前回のアメリカ旅に続いて今回も同行してもらいました。実は彼が得意としているのは、食べ物や人物の写真。だけど、そんな彼だからこそ、現地の空気感を写真におさめられると期待しているんです。

yansu : そんなに期待してもらえてたなんて、光栄で胸がいっぱいになりますね(笑)。僕がカジャデザインとの仕事で心がけているのは、みなさんの“栞(しおり)”になる写真を撮ること。旅の後に見返して、「こんなディテールがあったよね」「そうそう、このホテルのこのデザイン」「壁に触れたあの瞬間、こんな気持ちになったな」って思い出してもらうきっかけになればと。だから、いわゆる“SNS映えする写真”ではなく、“お客さまやカジャデザインの皆さんに響く1枚”を撮ることが僕の役割だと思ってます。

感性を大事にシャッターをきる、フォトグラファーのyansu KIMさん
現地で撮影をしたライムストーンの壁

川名 : インドネシアから帰国して、金さんの写真を見せてもらうと、ドローンで全景を俯瞰したり、細部のデザインや素材感が写し出されていて、空気感が甦ってくる感じでした。感性をすごく刺激する写真だと思いますね。

リゾートとは何か? 心安らぐ空間とは何か? その答えを求める旅

山田先生 : インドネシアの旅で、自分自身、驚いたことがあります。普段、自宅にいるときは常にテレビをつけてるんですね。でも、「ザ・バレ」や「アマンジウォ」にいる間は、テレビを観たいと思わなかった。時間がゆっくり流れていて、それでも不思議と手持ち無沙汰な感じはしなくて。天井にヤモリが這っていても違和感がなく、それも景色の一部になっていることに気付けたり……。いろんなことが初体験でしたね。

the baleの客室
amanjiwoのプールサイドでくつろぐ代表の大熊

大熊 : 特にホテル「ザ・バレ」などはそれが突出していると思います。大人の隠れ家をコンセプトにしていて、誰にも邪魔されることなく、自分の時間をゆっくりと満喫できる。そのために16歳未満のお客様は泊めないという徹底ぶりです。

山田先生 : “空間が生活を変えてくれる“ということを実感しました。リゾートの感じ方は人それぞれだと思いますが、私の中にある“リゾート”の認識が変容した瞬間でした。

坂田 : 山田先生がおっしゃること、よくわかります。iPadがあればなんでもできるけど、ホテル「ザ・バレ」やホテル「アマンジヲ」に滞在するとそれが必要ないんです。気持ちが満たされるんですよね。無機質なものをありがたがる世の中ですが、機能性を求める人もいれば、精神性を重要視する人もいる。私はカジャデザインで、その空間にいることによって心がやすらぐ“精神性ファースト”を実現したいと感じましたね。

大熊 : そうだよね。機能性はハウスメーカーの家が実現してくれる。カジャデザインの家は機能性を最優先にしているわけじゃない。お客さまが大切なお金を投じるに値するもの、言い換えると価値観のある、空気感のあるリゾート建築をつくっていくことの重要性を今一度、再確認できたと思います。

川名 : 私の場合、印象に残ったスポットは、バリ島ウルワツ地区のヴィラ「アリラ・ヴィラズ・ウルワツ」です。特にそこのカフェは出色でした。建築が好きだと、その建築の“無人”の状態を撮影したくなるんです。でもあのカフェは、人が集っていて初めて完成する場所としてデザインされていた。“人が介在しない美”もあっていいんですが、私たちが提案しているのは家だから、人がいて美しいという状態をつくらないといけない。非常に参考になりましたね。

日野原 : 人がいて美しい、というのはいい表現だと思います。

川名 : それから、ホテル「ザ・バレ」もとても印象的でした。朝のバレも、昼のバレも目撃することができた。広い空間と狭い空間がうまく配置されていて、その全体のバランス感覚は日本におけるリゾート建築でも活かせるのではないかと感じました。

現地での新しい発見を語る営業の川名

大熊社長 : マニュアル的でないところがインドネシアのリゾートのよさだよね。マニュアルがあるとどうしても画一化されてしまうけれど、マニュアルがないながらも良さを引き出していることがすばらしい。

プラスする建築とレスする建築。究極のリゾート建築を決定づけるもの

木村 : 僕が大好きになったのは、バリ島ウブド地区のホテル「リッツ-カールトン・バリ・マンダパ」。そこにある木製の洗面ボウルに一目惚れしたんです(笑)。僕は、国内メーカーの洗面ボウルならすべて頭に入っています。でも、木製のボウルは、マンダパリッツで初めて見た。これをカジャデザインの家に使いたい!と思って、メーカーを探し回ったり、日本サイズに合うように図面を書いたり……。

Mandapa, A Ritz-Carlton Reserveで使用されている木製の洗面ボウル

大熊社長 : それそれ! そういう経験は現地に来なければ絶対にできないことだからね。

木村 : 僕は普段、「ザ・バレ」や「アマンジヲ」のエッセンスを取り入れた家の図面を見ています。図面を見るといつも、頭の中で家を建てるんです。「この家を建てるにはいくらかかるのか」を算出するのが僕の仕事だから。でも、そういった、「頭の中で何度も建てた家」とまるっきり違っていたのが「マンダパリッツ」だった。新鮮でした。

大熊 : 「マンダパリッツ」は他のリッツと全然違う設計だからね。リッツらしさをあえて消している。だから、プロの木村にとっても新鮮だったんだろうね。

Mandapa, A Ritz-Carlton Reserveの客室

日野原 : 僕が驚きと共に嬉しくなったのはビーチクラブ「ポテトヘッド」でした。ポテトヘッドの外装には、大津波で被害を受けた家のドアが使われています。でも、暗い印象は受けません。ソファーに寝そべってお酒を嗜む人たち。すぐそばにある海の波の音を聞き、沈みゆく太陽を眺めて……思い思いの時間を過ごしていました。東京にはない、自然を100%体感できる空間ですよね。

beach club potato headの様子

坂田 : 「ポテトヘッド」はバリ島で一番人気のビーチクラブだそうだけど、遊び心というか、人生を愉しむという気持ちであふれていた。

日野原 その場所では、「リゾートとは何か?」という大熊社長からいただいた命題の答えが獲得できたような気がしました。自然だけではだめで、自然の恩恵と人間がつくった上質な空間が融合して初めてリゾートが生まれる。それがリゾート空間の本質だと理解しました。鳥がさえずっている音、波の音、インドネシアに降り立ったときに感じた甘いお香のにおい、植物の緑や青い空から得られる視覚、料理のおいしさ、家具のさわり心地。ありふれた写真からは絶対に伝わらない空気感を、カジャデザインが再現しようとしていることがよくわかりました。「ザ・バレ」のすばらしい接客に感動して、王族になったような気持ちにもなれましたし(笑)。

大熊 : 日野原くんがそこで感じたものが、どのように言葉として紡ぎだされるか、これから楽しみだね。

yansu : 日野原さんの「リゾートとは何か?」という部分と重なるのですが、私の場合、リゾートの概念が変わったのがジャワ島のホテル「アマンジヲ」でした。今まで抱いていたイメージは、花火がバンバン上がり、次々にシャンパンの栓がぬかれて、大きなジャクジー風呂があって、みたいな感じ。それに対し「アマンジヲ」には、音楽がない。ドアもない。風も雨も入ってくる。昼は鳥のさえずりを聴く。夜は静けさを楽しむ。建築の知識がない代わりに、そういった“空気感”を感じ取ることができましたね。

山田先生 : それは私も同感なんですよ。建築家は何かをプラスすることが表現だと考えがちだが、勇気をもって何かをマイナスする、すなわちレスの価値を提案していくことも大切なのだと……。

yansu : ありがとうございます。でも、そこから、大量の疑問が生まれました。リゾートって何なんだろう? 食べ物が豪華=リゾートなんだろうか? その答えをずっと探しています。その答えを見つければ、カメラマンとしての自分の役割が明確になるように感じられて。

大熊 : その目線、すごくいいよ! その目線で撮影してくれることが、私たちがyansuくんに求めることだね。

今回の記事では旅を振り返り、それぞれのリゾートホテルで感じた心地よさにはどのような理由があるのかなど、それぞの目線で語っています。

Part2では、カジャデザインのリゾート住宅の代名詞でもある、『マテリアル』に焦点を当てて
より深くカジャデザインの目指す本物の空気感についてのお話です。
それぞれの素材との出会いから、実際に日本の住宅に取り入れるまでの道のりを感じていただけると幸いです。