2018.6.20 世界を旅する建築会社
スリランカ

大胆な色使いや発想に触れた、インテリアデザイナー筒井の気付き

ライター 横内 信弘

スリランカを訪れたインテリアデザイナー・筒井が、感性を触発された色とデザイン、インテリアの特徴とは……。リゾートという言葉から発想する白色ではなく、黒色が大胆に使われているという衝撃的な体験が、今後、カジャデザインでどのように生かされていくのか期待されます。

スリランカの地で、インテリアの特色について語る筒井

スリランカを代表するリゾート建築で出会った、既成概念を超えた色使いとインテリア

―スリランカに行かれて、いろいろ見られて、色やデザインなどで気付きがあったようですね。

筒井:私がスリランカ研修でとっても衝撃を受けたのが、ジェフェリー・バワ設計のヘリタンス・カンダラマでした。インテリアデザイナーである私が驚いたのが、その家具や空間の色使いでした。たとえば、ソファの横にあるサイドテーブル。小さなテーブルの内側が見えるようになっているんですけども、外側はチークの茶色い素材で、内側は黒で覆ってある。そして、収納のクローゼットも同じようにチークの木材が用いられていますが、人から見えるところは黒で覆ってある。家具も建築も部屋も全部一緒っていう考え方が出ているのが刺激的でした。

―バスルームなども意外な色使いだったそうですね。

筒井:普通、バスルームというと人間の浄化の場というか、汚れを落とす場所なので白のイメージがあると思うんですが、ヘリタンス・カンダラマではトーンを落とした黒色が使われていました。

―そのようにバスルームを黒にしたっていうのは、筒井さんとしてはどういう理由だとお考えになりますか。

筒井:そうですね、私の中で部屋とかホテルってを考えたときに、バスルームというのはインテリアとか建物のどこにも属していない一つの空間としてとらえられますね。その特殊性があると思いますが、そこではあえて存在を消すという設計思想があるんじゃないでしょうか。今回、同行したカメラマンがドローンを飛ばして映像を撮ってくれたんですが、壁面緑化の建物から寄っていくと部屋が見えてきますが、バスルームとかトイレは黒い空間なので写っていない(見えない)。完全に黒で存在を消してしまっているって所が、“こういう発想もあるのか”と気付かされました。

豊かな自然に対応したアースカラーをベースにした色彩計画

―他のホテルでも、やっぱり色使いというのは一緒でしたか? それともホテルによって何か違いがありましたか。

筒井:スリランカは全体的にアースカラーといってモルタルの色と、それから白と濃い茶色の組み合わせが基本になっていて、そこに深緑などのグリーン系が入るという感じでした。ほとんどのホテルで、その大枠の色遣いは一貫していましたね。
ただ、ホテルによってはアクセントで赤とかマスタードイエローが使われているケースもいくつかありました。アバニ・ベントータというスパ・アンド・リゾートもその一つです。今回、夜10時頃に着いて朝出ちゃうという中継地で使われたホテルであまり紹介されていませんが、クッションなど白に茶色、薄いベージュを基本に、差し色で赤などが上手に使われているのが印象に残りました。

デザイン集団が仕掛ける遊び心と抜群のバランス感覚のリゾートホテル

―スリランカには、パラダイスロードっていうデザイン集団があるんですか。

筒井:はい、そうなんです。おそらく、パラダイスロード・ザ・ベントータというホテルでは、アートとか小物も全部「パラダイスロード」が選んでいました。見ていくと、仏像のような少しおどろおどろしいオブジェがあった理、かと思えば、マリア様みたいな像があったり、すごく遊びを効かせたコーディネートをしています。ですが、全体で見るとスタイリッシュな空間へと仕上げる見事なバランス感覚を感じさせるホテルでした。

―こういう白と黒だけを潔く使って、カラフルな絵とかを飾るみたいなコーディネートはあまり見たことがないですね。

筒井:ニューヨークなどでは白と黒を基調としたインテリアは珍しくありません。でもここでは、レリーフが入ったアジアンテイストな木の椅子があったり、かと思えば、大きなビー玉のようなオブジェがあったり。ばらばらの要素のものを組み立てるというのは初めての出会いでした。バワの設計は建物ありきで、ベースが白の壁が多いので、黒を多用したのではないでしょうか。インテリアのスタイリングとしてすごく楽しい。

相手が本当に好きなもの。それを引き出すキーワードの一つと出会った旅

―今回いろいろ体験されたことが、今後のカジャデザインのお仕事につながっていきそうな予感はありますか。

筒井:今度のスリランカ研修で一番感じたのは、リゾートスタイルとひとくくりで表現できないし、してはいけないということでした。リゾート空間といっても千差万別。同じバワの建築の中でさえもまったく異なっているので、その人それぞれのリゾート感覚があると思います。まずお客様のリゾートのイメージや空気感をじっくり聞くということの大切さを実感しました。

―カジャデザインの作品はどちらかというとバリのイメージがありますが……。

筒井:そうですね、比較的バリのリゾートホテルをテーマとしたご要望は多いですが、ヨーロピアンやモダンなど様々なスタイルを実現しています。
私たちがもっとも気をつけねばならないのが、リゾートはこれ、と色やデザインを押し付けてしまうことです。スリランカで見てきたことは、この人には何が一番いいのかなって考える時に、本当に好きなものを引き出すキーワードの一つとなるでしょう。その意味で、今回の旅はすごく有意義だったと実感しています。