自邸を新築するスタッフの家づくりレポートVol.5 「現場監督ならではの施工のこだわり」
上棟祝いが終わると、内外装の仕上げなど、より具体的な施工に入ります。普段なかなか見ることのできない施工現場ですが、ていねいな施工と小さな工夫の積み重ねが空間の完成度を高めるのです。今回は高橋家の施工現場から、カジャデザインならではのこだわりや工夫を紹介します。
カジャデザイン13年目、住宅業界に関わって約20年とベテランの高橋が、これまでの知識と経験を詰め込んだ高橋邸のプロジェクト。2024年6月に上棟祝いを終え、10月末の竣工に向けて、着々と施工が進んでいます。
施工現場は現場監督である高橋の仕事場でもあります。現場監督は職人たちとコミュニケーションをとり、施工を滞りなく進めることが重要な仕事の一つです。今回は高橋自身が設計も手掛けており、「図面を見れば、職人たちが質問もせずに作業ができるようていねいに図面を書いた」と言います。
では、高橋邸のこだわりポイントを施工現場から見ていきましょう。
室内をイメージさせる外観とアプローチの演出
まずは、家の顔となる外観から。カジャデザインが得意とする天然石をふんだんに使用しています。石を貼るのは高い技術を要するため、どの現場でも熟練の職人が施工を手掛けています。
当初、アプローチの階段は開口の幅で設計していましたが、「ずっとしっくりこなくて悩んでいた」と高橋。ある時、下段の段板を伸ばすことを思いついたそうです。段板をゆとりのある広さにすることで、単なるアプローチの階段ではなく、舞台のような場となり、リゾート感も生まれました。
アプローチの正面にはヒタムモザイクを貼る予定です。これは、リゾートホテルのエントランスの手法を参考にしたもの。最初に石の風合いを感じさせることで、その先に広がる空間への期待感が高まります。
「リビングに入ってから空間の全容がわかるのではなく、家に入る前にリビングにつながるような演出を試してみたかった」と高橋。
そして、エントランスホールも高橋がこだわった場所。一般的にLDKが注力しがちですが、ホールや廊下などメインではない空間も手を抜かないのも、これまでの豊富な知識と経験があるからこそできることだと言えるでしょう。
扉を開けると、ゆとりのある廊下、その奥には寝室へとつながる前室があり、2階のLDKへ続く階段は見えません。あえて階段や居室を直接見せず、廊下などの余白をうまく活用することで、空間にメリハリを生み出しています。
廊下の天井にはダウンライトは一切設置せず、ノイズとなるものは排除し、飾り棚上のアッパーライトが天井を照らします。天井の下地の精度が高くないと、光で凹凸が強調されてしまうため、職人が下地を念入りに仕上げてくれたそうです。
シンプルなエントランスホールのアクセントとなっているのがヒタムボーダーをあしらった飾り棚。石やタイルを施工する際は端をカットする必要がありますが、高橋はムダが出ないよう、ヒタムボーダーのサイズを基準にデザインしました。ニッチもヒタムボーダーがぴったり収まるというこだわりようです。
こだわりと工夫が詰まったLDK
2階LDKの壁と天井は、高橋が「石以外はプレーンに仕上げたい」と白の塗装を採用し、新卒入社した会社からの付き合いで、信頼を寄せる塗装職人に依頼しました。キッチンの扉も塗装を採用。塗装は色を揃えることができ、空間により調和させられるというメリットもあるのです。
リビングの一面はアクセントウォールとしてヒタムモザイクを使用。サイズが異なるうえ凹凸もあるヒタムモザイクは、カジャデザインのなかでも施工がもっとも難しい石。施工場所に合わせてカットするのはパズルのようで、細かな調整が必要となるのです。
リビングの下地には、上棟祝いに家族みんなで手形や絵を描いた合板を使用。上から石を貼るため最終的には隠れてしまいますが、家族がよく眺める壁に思い出の合板を貼ることで、当時を思い出すきっかけにもなるでしょう。合板を貼る場所は職人のお任せですが、高橋ファミリーへの思いやりが感じられます。
リビングではヒタムモザイクとともに、テレビボードと一体にデザインしたエタノール暖炉が存在感を放っています。テレビボードはこれまで1本の棚板で施工することが多かったそうですが、2本設置し、テレビやオーディオの機材を置けるよう工夫しました。
また、暖炉の内側は通常鉄板を貼りますが、角に鉄板の厚みが見えるのが気になると(一般的には気づかないほどわずかな厚みですが)、不燃の左官材で施工。内側は黒、外側はムラのあるグレーで仕上げ、角で切り替えることで、シャープなデザインに仕上げました。
小さな空間もていねいに施工
トイレなどの小さな空間は優先順位が低いことが一般的ですが、実は小さな空間は壁の素材をより近くに感じる場所。それをよく熟知しているからこそ、細部まで抜かりはありまん。
カジャデザインではモンスターストーン、クイン、ヒタムの3種が人気の石ですが、ぜいたくにもトイレにクインを使用。クインは色ムラがあるので、バランスよく貼るのは職人のセンスが必要です。熟練の職人たちが、キレイに貼るためサイズを測りながらていねいに施工していきます。
現場には左官や塗装、石やタイルなどさまざまな職人が出入りし、一緒に働きます。カジャデザインの現場は休憩時間もわきあいあいと仲がよく、コミュニケーションも活発なのだそうです。
「みんなで一つの家をつくっていると思っているので、職人たちはみんな協力的。施工がスムーズに進むよう、互いに譲り合いながら進めてくれています」と高橋。次に入る職人が作業しやすいよう現場をきれいに保っているのも、その表れだと言えます。職人たちも高橋邸の完成を楽しみにしているそうです。
ゴミやムダを減らす現場監督ならではの工夫
建築の施工現場は、どうしても資材の残りなどゴミが出てしまいます。常々、現場監督として施工で出るゴミを減らしたいと思っていたという高橋。そこで自邸では、日本の住宅の基準モジュールである910㎜を守りながら設計し、できる限りゴミやムダが出ないよう設計段階で工夫することを試みました。
「構造の柱を910㎜ピッチで立てているので、構造もしっかりするし、材料も流通通材をムダなく使えます。リビングの天井高は3mですが、これも3×10板(さんとうばん/910㎜(3尺)×3030㎜(10尺))をそのまま貼れる高さです。モジュールを守ればカットする手間もなくなりますし、施工もやりやすいんです」と高橋は話します。
伝統的な規格は理にかなっており、うまく活用することでエコでありながら、美しい家をつくることができるのです。現場での気づきを設計に反映させるという、現場監督らしい取り組みです。
施工も順調に進み、まもなく完成!次回はできたばかりの高橋邸を現場からレポートします。
文 / 植本 絵美 ( Editor / Writer )
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