2024.11.6 「注文住宅」を知る

家を新築するときや建て替えをするとき、ホームエレベーターを設置しようと検討する方が増えています。ホームエレベーターとは、個人住宅に設置される家庭用のエレベーターです。小型エレベーターと似ており、その違いがわからない方も多いでしょう。

本記事では、将来の介護などに便利なホームエレベーターが一体どんなものなのか、設置のメリットやデメリット、設置する際のポイントについて紹介します。

ホームエレベーターとは

ホームエレベーターとは「特殊な構造、または使用形態のエレベーター」を指します。おもに個人の住宅への設置が想定されたエレベーターです。ここからは、よく似ている小型エレベーターとの違い、また、ホームエレベーターの駆動方式を2種類解説します。

ホームエレベーターと小型エレベーターの違い

通常のエレベーターにかけられている積載荷重の条件が緩和されたものを「小型エレベーター」と呼び、サイズや規定などが似ていることから、ホームエレベーターと混同されがちです。しかし、両者にははっきりとした違いがあります。

ホームエレベーターは、設置できる場所が住戸となっており、定期検査が必要ありません。また、昇降行程に上限、下限の規定はなく、かご床面積が1.3m2以下になっています。内装材に難燃材使用の制限がないため、デザインの自由度が高く、住宅のインテリアに合わせたカスタマイズが可能です。

小型エレベーターは、おもに福祉施設、協会、診療所、学校などの施設で利用されています。昇降行程は10m以下、かご床面積は1.1m2以下と定められています。基本的には難燃材が内装に使用されており、定期検査が必要になります。

小型エレベーターは耐久性や安全性が商業用途に合わせて強化されている点が特徴です。

油圧式とローブ式の違い

ホームエレベーターには、油圧の力で動く「油圧式」とロープで巻き上げられる「ローブ式」の2種類が存在します。
油圧ユニットから発せられる圧力で、油圧ジャッキが押し上げられ、結果エレベーターのかごが昇降するという仕組みを「油圧式」と呼びます。油圧式のものは、ロープ式よりもコンパクトで、スペースを小さく収められるところがメリットです。

一方「ロープ式」は、ワイヤーロープで吊り下げられた箱が、ドラムの巻き上げによって上下されるという方式です。昇降できる長さが油圧式より長く、たくさん停止させることができます。駆動音が静かで動きも優しいので、乗り心地が快適なところがメリットですが、本体の上下両方に、モーターなどを置くスペースを確保しなければなりません。

建物や住居は、高さにある程度の制限がかかります。このため、設置スペースの観点から油圧式が人気ですが、昨今のロープ式のものはかなり刷新され、設置寸法が油圧式とそれほど差がなくなってきました。

もちろんほかにも考慮すべき点はありますが、自分の住居にはどちらのタイプが適しているのかは、エレベーターメーカーなどに相談しましょう。

ホームエレベーターのメリット・デメリット

住居に設置するには何かと便利なホームエレベーターですが、もちろんメリットがあればデメリットもあります。メリット・デメリットを理解し、設置を検討しましょう。

メリット1.同時に複数人の利用ができる

ホームエレベーターの1番のメリットは、上下階への移動が楽になるという点ですが、小さくても「複数人で」移動が可能というところも大きなポイントです。

定員は3名以下(積載量は200kg以下)と定められています。これは業務用のエレベーターよりはるかに少ない人数ですが、住居内で家族だけが使用するということを考えれば、十分な機能と言えるでしょう。

また、家族内で介護が必要になった場合でも、介助者が同乗することが可能ですので、ライフステージや暮らしの変化にも柔軟に対応できます。さらに、ベビーカーや車いす、荷物を持った状態でもスムーズに移動でき、日常生活の利便性が向上します。

メリット2.デザインの種類が豊富にある

昨今のホームエレベーターは、従来に比べて種類も豊富になり、昇降口などのデザインも格段に増えています。業務用の無機質なデザインから、インテリアになじむ木目調や、モノトーンで構成されたシンプルでスタイリッシュなデザインなど、さまざまなパターンから選ぶことが可能です。

また、エレベーター内部の照明や床材、手すりの色や形状などもカスタマイズでき、住宅の雰囲気や個人の好みに合わせた空間作りができます。さらに、外観だけでなく、操作パネルやボタンのデザインも選択肢が増え、操作性と美観を両立した製品が増えています。

このように、ホームエレベーターは単なる移動手段としてだけでなく、住宅の一部としてデザイン性にも優れている点が大きな魅力です。

メリット3.後付けもできる

新築と同時にホームエレベーターを付けるなら、設計段階から設置場所のデザインなどを含めて建築計画を立てられます。しかし、後から設置するのは難しいのではと考える方もいるでしょう。

ホームエレベーターは、住宅自体に設置に耐える強度があれば、後から設置することも十分に可能です。また、強度が不安な場合は、費用がかかることにはなりますが、リフォームで強度を確保すれば設置が可能となります。

エレベーターの設置が難しい場合でも、椅子式階段昇降機を階段レールに取り付ける方法があるので、検討してみるとよいでしょう。

デメリット.一定のスペースが各階に必要になる

ホームエレベーターも階段と同じで、設置場所と考える必要があります。つまり、そのスペースは居室や廊下などとして確保することはできないということです。その分、間取りに制約ができてしまったり、居住スペースが少なくなってしまったりしてしまうでしょう。

また、ホームエレベーターの動力源は電気です。停電してしまった場合には使用できなくなります。もちろん、非常時には手動で下階まで下ろすようにはなっていますが、上にのぼることはできなくなると考えておきましょう。

さらに、点検や修理にかかるコストも無視できません。とくに部品の交換や故障時の対応は、時間と費用がかかる場合があります。また、エレベーターの設置には工事期間が必要で、その間、生活に多少の影響が出ることも考慮すべき点です。

ホームエレベーターを設置する際に押さえておきたいポイント

ここでは、ホームエレベーターを設置するときに押さえておきたいポイントを解説します。

エレベーターの床面積は容積率に算入されない

バリアフリー化の推進にともない、2014年に改正建築基準法が施行されました。これにより、エレベーターの床面積は容積率に算入されないということになりました。

容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合を指します。容積率の上限は地域ごとに差がありますが、改正法以前は、この容積率の上限が邪魔をしてエレベーターを増築したくてもできないというケースも散見されたのです。現在はその心配はないということになります。

ただし、容積率には算入されませんが、建築面積や延べ面積にはエレベーターの昇降路も算入されます。また、エレベーター棟として外側に増築した場合、道路斜線や北側斜線などの斜線制限の対象になります。この点は注意が必要です。

助成制度が活用できる場合もある

ホームエレベーターは住居のバリアフリー化に含まれますので、助成金を利用できる場合があります。
バリアフリー化のための助成金は年度ごと、または数年ごとに変わります。また、地方自治体で独自に取り組んでいるものもありますので、該当地域の制度の有無など調べてみるとよいでしょう。

必要に応じて「階段昇降機」で代替する

ホームエレベーターのコンパクト化や規制の緩和にともない、昔に比べればかなり設置しやすくなりましたが、それでも建物の構造や建築基準法上の問題、予算の関係などで設置できないというケースもあるでしょう。

そういった場合は、椅子に座った状態で階段横のレールを使って昇降できる「階段昇降機」で代用するのもひとつの選択肢です。
階段昇降機は工事の規模がエレベーター類に比べて小さく、設置費用や維持費も抑えられるというメリットがあります。ただし、移動する本人しか乗れないので、その辺りが不便に感じる可能性もあります。

ホームエレベーターと階段昇降機、それぞれにメリット・デメリットがあるので、住居の環境や予算等に合わせての選択をおすすめします。

まとめ

ホームエレベーターは、同時に複数人の利用ができ、階の移動や荷物の移動も楽になるメリットがあります。普段の生活のクオリティを上げるため、きたる介護への備えとしても、ホームエレベーターはおすすめです。紹介したポイントなどを押さえて、ぜひ最適な選択をしてください。

カジャデザインで提供しているのは、ゼロから造る完全フルオーダーの注文住宅です。お客様の理想をお伺いし、そのイメージに寄り添い、ひとつ一つを紡ぎ、経験と知識で具現化しています。

もちろんホームエレベーターを含んだトータルなデザインをご提案します。長年住み続ける住まいだからこそ何でもご相談ください。ぜひショールームへのご来場をお待ちしております。