Works 56 創造性を高める家 東京都

細長い印象になりやすい、都心特有の奥行きがある敷地形状。その印象を軽減させるため、リビングを5.4mもの吹き抜けにすることで、縦への広がりを強調しました。さらに、リビングに隣接するバルコニーを大きく取り、室内と同じ天然石材ラバグレイを屋外の壁面にも貼り伸ばすことで空間の繋がりを持たせています。また壁を3階付近まで立ち上げることで、周囲からの目線をカットしプライバシーを確保しました。屋外空間には南国を思わせる樹木を配した鉢植えを設えて、リゾート感を演出しています。

音楽をご職業とするオーナーが特にこだわったのが、本格的な自宅音楽スタジオです。折り上げ天井内の斜めの段差は音の反響を考慮した角度に設定されており、間接照明を入れることでデザイン性を持たせました。また、壁面に一定量の設置が必要だった吸音パネルは、分割してモールディングで囲み額縁のように仕上げました。さらに硬い素材が広い面積であると音の反響が強くなるため、収納扉にもモールディングを施し凹凸をつけています。防音・調音による技術的な制約を、魅せるデザインとして落とし込みました。

様々な制限や条件がある中で、それを活かしてデザインに落とし込むことに徹底的にこだわりました。例えば、エントランスは楽器の搬入経路確保のため壁をアール形状にしたり、音楽スタジオのミラーは、撮影時の映り込みを防ぐためのシアカーテンを設置するなど、どれも洗練されたデザインとして機能性を満たしています。また、「仕事場」と「暮らし」を併存させた住まいならではの、快適で効率的な生活動線を実現しました。