ケリー・ヒル最後の軌跡「アマン京都」。日本の伝統とモダンデザインが京都の自然に寄り添うリゾート
京都、洛北鷹峯の森の中にあるアマン京都。
その構想は20年前に始まり、建築には10年の歳月を要し、2019年11月にオープンしました。
アマン東京とアマネム(三重県志摩市)と同様に、リゾート建築家ケリー・ヒルが設計を手掛けました。
残念な事に、ケリー・ヒルはアマン京都のオープンを待たずして、その約1年前にこの世を去りました。
このアマン京都はケリー・ヒルの最後の軌跡を体感できるリゾートでもあるでしょう。
広大な敷地に点在する客室は全26室
世界各国のアマンリゾートがそうであるように、アマン京都も周りの自然環境と共存するように客室やレストランが建築されています。
森に囲まれた敷地は、約24,000平米ありながら、客室は26室、2つのレストラン、レセプション機能をはたすアライバルパビリオンが建っている程度。
敷地を贅沢に使った建築群となっております。
各客室は一部屋一部屋が独立したヴィラタイプ。森の中にひっそりと佇むように点在し、リゾートを味わいながらもプライベートが尊重された空間です。
日本美がリゾートの客室で表現されている空間
客室はブラック、ベージュ、グレーといった配色で構成されています。
和の要素をモダン建築に落とし込んだシンプルなデザインです。
大きな窓からは四季折々の森の変化を望むことができ、その色合いがシンプルな内装に彩りを添えます。
ケリー・ヒルが描写した、自然を最高の贅沢としてそれに寄り添うようにデザインされた客室。
森の自然を空間の装飾のように見せるための大きな窓。そしてその自然を客室のどこからでも望める空間設計。
日本美には、「季節の変化を必然として受け入れる」といった哲学があります。アマン京都の客室は、まさに日本美がリゾートの客室で表現されている空間でした。
「格子」をモチーフにした直線と柔らかい雰囲気を生み出す曲線
「格子」をモチーフにした直線的建築デザイン
京都の街を歩くと、窓や戸、駒寄せ、犬矢来などの格子形状を多く目にします。
アマン京都ではこの「格子」がモチーフとして採用され、全ての建物の内装や外装にデザインされています。
どの建物も外装はシンプルではありますが、格子をモチーフとして、ここまで大胆に表現するデザインは、ある意味では派手さも感じられます。
内装もクローゼットや引き戸、TVやインテリアが設置されているニッチ、ベッドヘッドにもこの格子のモチーフが使われ、統一感を生んでいます。
施設内のレストランである鷹庵、そしてザ・リビング パビリオンには、そんな格子のモチーフを大きく使った間接照明を見ることができます。
格子と照明の陰影が立体感を生む、美しい照明演出です。
曲線の柔らかさを多用したモダンなインテリア
直線的なデザインの建物に対し、インテリアは曲線を多用したデザインを取り入れられています。
椅子やテーブル、暖炉、配膳用ワゴンに至るまで、その曲線とモダンなデザインが、空間に柔らかい雰囲気を生み出しています。
また施設内随所で見る特長的な椅子はカッシーナ製の特注品。
統一したデザインでありながら客室とレストランでは、配色や素材を変えて、空間と用途に合わせた変化を持たせています。
もう一つシンボリックなインテリアとして施設内で見るのが、提灯型のランプシェイドです。
客室ではスタンドライトとして、レストランではペンダントライトやシャンデリアとして空間を照らしています。
京都の老舗和傘屋の技術を応用して作られており、和傘のデザインが取り入れらています。
自然に寄り添って建つリゾート
ケリー・ヒルが最後に残したアマン京都。
日本の伝統とモダンデザインが京都の自然に寄り添って建つリゾートです。
オープンして1年のジャパニーズモダンリゾートはこれから、多くの旅行者、アマンジャンキー、そしてケリー・ヒルファンを魅了していくのでしょう。
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