コンセプトが明確化する、バリのリゾートホテル -出張レポートvol.01-
2022年10月中旬。
世界を旅する建築会社カジャデザインは、3年ぶりにインドネシアを訪れました。私たちは、東京で「本物のリゾート住宅」を提供するために、これまで世界の様々なリゾート地へ足を運んできました。
世界的なパンデミックが起こり、海外への渡航がストップしていた3年間。ようやく海外渡航の規制が緩和されたことで、旅を再開することを決意しました。初めに訪れる地は、やはりインドネシア。カジャデザインの家づくりの原点でもあり、訪れるたびに新しい気付きを与えてくれる場所。
時を経ても色褪せない普遍的な空間デザインから、持続可能なライフスタイルをコンセプトとしてデザインされたホテルなど、様々なホテルを視察してきました。ホテルごとに明確なコンセプトを持ち、ゲストを楽しませるバリのリゾートホテルをいくつかピックアップしてご紹介します。
The Bale
カジャデザインのインドネシア研修で必ず滞在をするのが、海沿いエリアに位置するThe Baleです。「大人の隠れ家」をコンセプトにした、非日常を体験できるリゾートホテルです。実際に16歳未満のお客様は宿泊することができません。これは、安全面への配慮と大人がゆっくりと心休まる時間を過ごすというコンセプトを明確に表現したホテル独自のスタイルです。
年月が経っても色褪せない、「古い」「新しい」を超える住空間
カジャデザインが初めにThe Baleを訪れたのが、2014年。
当時のインドネシアのリゾートホテルと言えば、ダークブラウンをベースにウッドレリーフやバリの絵画などが飾られた、いわゆる「アジアンリゾートスタイル」が一般的でした。
その中でもThe Baleは、洗練された空間にリゾートの要素を取り入れたモダンリゾートスタイルを見事に実現したホテルでした。特に、ホテル全体に使用されているライムストーンという白い天然石材とターコイズブルーの水盤やプールが、明るく開放的で洗練されたリゾート空間を創り出しています。
何度もこのホテルを訪れたことのある代表の大熊も、「ここは古いけど、その古さを感じさせない。変わらないけど、飽きが来ない特別な空間だ。」と話しました。
日本の住宅に落とし込みやすい空間設計
また、The Baleの空間構成は直線的で日本の住宅に照らし合わせたときに、実現しやすい空間であることにも気が付きました。
たとえば、ダイニングレストランのあるアウトドアスペース。プールや水盤の取り入れ方や、アウトドアリビングの考え方の参考になりました。今では割とメジャーになりましたが、当初は屋内と屋外をシームレスに繋ぐ空間づくりは、日本ではなかなか目にすることはありませんでした。
その他には、質感豊かなライムストーンやウッドルーバーの使い方、アプローチのデザインなど、日本の住宅でも十分に取り入れられる要素をたくさん吸収してきました。実際に、今でもカジャデザインの注文住宅では、ライムストーンやウッドルーバーを取り入れた本格的なリゾート住宅を提供しています。
Alila Villas Uluwatu
今回の旅で、訪れたかったホテルのひとつがAlila Villas Uluwatuでした。
スケジュールの関係で今回は宿泊することができなかったのですが、通常は受け付けていないというスイートルームの見学をさせていただき、このホテルのシンボルでもあるSunset Cavana Barで夕食をとりました。
持続可能性は、新しいラグジュアリー
Alila Villas Uluwatuでは、地球環境に配慮した様々な取り組みが行われています。たとえば、客室やレストランで出される飲料水は、優れた浄水システムで独自の飲料水を生産し、ガラス製のボトルに詰めています。そうした工夫を随所に取り入れ、2021年には使い捨てプラスチックを全て廃止したといいます。
また、設計自体も建築家WOHAによるリゾートの独特のエコデザインが採用されています。洗練された現代的なデザインとバリのアクセントを組み合わせています。
敷地内の植物は、地元の鳥や動物の生活を促進するために、ウルワツの生態系あった植物の苗床で育てられています。そして敷地内を散策していると、黒い石のような塊が植栽の下や建物の屋根に敷き詰められているのは良く目にします。これは、溶岩石を使用することで、熱を吸収する断熱材のような効果や、雑草を制御する能力など、いくつかの利点があります。そうすることで、空調エネルギーの消費や除草剤などを最小限に抑えることができています。
エコにばかり気を取られると少し窮屈な暮らしをしなければいけないというのは、すでに昔の考え方。ラグジュアリーに、おしゃれに、快適に過ごすことがエコに繋がる、それを実現した素晴らしいホテルだと感じました。
まるで豪邸。住むように滞在するスイートルーム
今回、スケジュールの関係でどうしても宿泊ができなかったのですが、なんとかお願いをしてヴィラの見学を交渉してみました。
本来は見学は断っているそうですが、過去に宿泊した経験があることと、カジャデザインのリゾートに対する想いを伝えると、特別にOKを出してくれました。しかも、Alila Villas Uluwatuで最上位のスイートルームを見学させてもらえることに。
まず驚いたのが、ホテル内にあるにも関わらず、そのままヴィラの前に車をつけることです。これはもはや「住宅」を建てようと思って造られたかのような佇まい。ずっと暮らすことはないけど、滞在期間中はそこが我が家のように、リラックスしてくつろげる空間を実現したかったのではないでしょうか。
中に進むと、「豪邸」と呼ぶにふさわしい空間がそこにありました。大きな中庭をぐるりと回りメインのLDKへと向かいます。リビングに入ると、広々とした室内に洗練されたインテリアがバランス良く配置されています。
そして、リビングの大きな窓から見えるのは、プライベートガーデンとその奥に広がるオーシャンビュー。20mはある大きなプールも、この景色も全て宿泊者が独り占めできます。複数あるベッドルームや独立したキッチン、ウォークインクローゼットなど、それは完璧に住宅のカタチそのものでした。
Sunset Cabanaで過ごす、非日常のひととき
一通り見学を終え、そろそろ夕暮れどきを迎えようとしていました。一同が向かったのは、海の断崖絶壁にせり出すように造られたSunset Cavana Bar。
スコールや潮風にも負けない、強固な木材ウリン材のパーツを、真鍮の装飾でつなぎ合わせているボックス状の空間です。この真鍮のパーツは、ホテル内の手すりやオブジェなど、様々なところで用いられ、デザインの統一感を演出する大切な要素になっています。
そして、このホテルにきて必ず見てほしいのが、このカバナから眺めるサンセットです。この日も、息を呑む美しいサンセットを見ることができました。
バーでは、美しい景色を見ながらユニークで芸術的なフードやカクテルが楽しめます。普段はビンタンビールばかりチョイスする私も、ついついおしゃれなカクテルを注文してしました。
非日常のひと時を満喫しながら、「暮らしの中にこういう非日常を体験できる場所があるって、大切だよね。」「カジャデザインの住宅で提案できることは、もっとたくさんあるよね。」と語り合いました。
Potato Head Suite & studio
2020年にオープンしたDesa Potato Headは、スミニャックにあるビーチクラブと2つのホテルで構成されたリゾート施設です。「Good Times, Do Good」というスローガンを掲げ、豊かな文化、廃棄物ゼロの目標、楽しいことを愛する姿勢を、ライフスタイルを通してゲストに与えることをコンセプトとしているホテルです。
宿泊者だけでなく、地域コミュニティの場としても使われてて、レストランやバー、ライブラリー、屋上の公園などは公共の道路からも直接アクセスができ、幅広く人々が集い、情報や体験を共有する場となっています。
サステナブルな思考を、「デザイン」と「体験」に反映する
Potato Head Suite & studioは廃棄物0を目指し、様々な取り組みが実施されています。
そのひとつが、宿泊者がチェックインしてまず初めに案内される「Circle Store」という場所。ここで、宿泊者にはステンレス製のウォーターボトルが配られます。滞在中は、ホテルスタッフに言えばこのボトルに美味しい飲料水を補充してもらえるというシステムです。これがペットボトルゴミの削減に繋がります。
しかもそのボトルが、とてもオシャレ。キャップには、プラスチックゴミを再利用した素材でPotato Headのロゴがマークされています。宿泊者にはプレゼントされるので、自宅に持ち帰って使い続けることも可能です。
遊び心が散りばめられた、ライフスタイル体験型ホテル
今回、メンバーは2種類タイプの部屋に宿泊をしました。そのひとつがアイランドスイートです。クイーンサイズのワンベッドタイプの部屋で、客室内にはリビングスペースとバーカウンターが備え付けられています。
壁面はバリの寺院で実際に使われているレンガが使用されていて、あたたかみがありオシャレな印象。家具やベッドには、地元の染め物や織物を使用したファブリックが採用されています。このように、地域の特色を表す素材や製品を多く取り入れていることも、このホテルの特徴のひとつと言えるでしょう。また、室内に飾られたアートはどれも個性的ですが、その空間にしっくりとマッチするようにスタイリングされています。
客室の広さや、遊び心のあるデザインはリノベーションのアイデアに応用できそうです。一緒に宿泊をする、リノベーション担当のスタッフも、熱心に間取りやサイズを確認し、メモをとっています。
そして、バーカウンターには様々なリキュールやフルーツ、氷などが備え付けてあり、自分たちで好きなカクテルやモクテルを作れるようになっています。グラスもドリンクに合わせて、色々な種類が用意されています。もちろん、カクテルのレシピも用意されているので、お酒にあまり詳しくないゲストでも安心です。
そして、もうひとつのお部屋がレジデントスイートというタイプです。広さは75㎡ほどあり、最大天井高が約5mもある大空間。大きな空間の中に、ベッド+カウンターデスク、リビング、バスがブロック状に配置されています。室内の中心にバスタブがあるという、日本ではなかなか見ることのない大胆なデザインが、非日常感を味わせてくれます。
ここに宿泊した代表の大熊は、「私は、ちょっと落ち着かないかな。もっとシンプルで静かな空間で過ごしたい。」と言っていました。確かに、ここはビーチクラブがあったりとてもエネルギッシュで賑やかな楽しさがあるホテルです。どのホテルも、それぞれのコンセプトに沿った空間構成、デザイン、体験が用意されています。その中から、自分にあったホテル選びをすることも重要なポイントですし、これは家づくりにも同じことが言えるのではないだろうかと感じました。
どんな「建物」にしたいかも重要ですが、そこで「誰と」「どんな」過ごし方をしたいのかをイメージすることがとっても大切になのだと再度認識するきっかけになったホテルです。
「家が、理想のリゾートになる。」を叶えるために
私たちが訪れた、それぞれコンセプトの異なる3つのホテルはいかがでしたか?
注文住宅で東京に理想のリゾート住宅を提案するカジャデザインには、「モデル」はありません。その代わりに、様々な地域やスタイルのホテルを視察して、お客様のどんなご要望にも全力で本物を提案するための材料や要素を蓄積しています。
次のレポートでは、インドネシアでしかできない特別な買付の様子をお伝えします。今回はインテリアショップKAJAのバイヤーと合同で出張に行ったので、普段ではなかなか行けない、ディープなエリアにも足を運びました。
次回のブログもお楽しみに!!